2022年9月10日(土)10時30分から横浜崎陽軒本店において前統合幕僚長 河野克俊氏をお迎えし、「ウクライナ侵攻と我が国の安全保障」というテーマで、令和4年度 防衛講演を開催いたしました。
当日は朝から青空の広がる絶好の講演会日和となり、時節を捉えたホットなテーマの講演会ということもあり、用意した席も全て埋まり大盛況。事務局員として1年前から計画した講演会が無事開催出来ましたこと安堵しております。
講演に先立ち、河野氏は約二月前選挙応援中に凶弾に倒れられた安倍元総理の人となりをご自身が勤務を通じ直接ご覧になった生前のエピソードを基に語られ哀悼の意を示されました。
「この時、マスコミはみんな硫黄島を離れ、次の訪問先に先行しており一人もいなかったので、単なるパフォーマンスでなかったと思います。これはたまたま近くにいた自衛官が撮影した写真です」
講演ではこれまでの我国の安全保障の大前提が以下に述べる二つの点で崩壊したと指摘され、今後の日本の安全保障についての私見を述べられました。
(1) NPT体制の崩壊
5大核保有国の1つであるロシアが非保有国であるウクライナに対して核による恫喝を行ってしまった。分別があり大人の対応が出来るとみられていたロシアが単なるチンピラと変わりがないことが分かってしまった。
結果、北朝鮮などの国家に核保有の正当性を与えてしまうことになった。北朝鮮は絶対に核を放棄しないだろう。
(2) 「核戦争へのエスカレーション」を考慮して軍事的に動かない米国
今回の米国の対応は、同盟国に対する核の傘の信頼性に疑念を投げかけることとなった。
このような前提の変化の中で、ウクライナ侵攻後のロシアの国力は衰退し、代わって中国の存在がより大きくなり、世界の対立の中心軸は「米中」となる。また、台湾問題も1つの中国という文脈だけではなく、太平洋を挟んだ米中対立という構図の中で、尖閣諸島問題も含め考える必要がある。
米中対立の時代にあっては、日本を含む極東が最前線となる。
台湾周辺で紛争が発生した場合にはその火の粉が我が国に降って来ないはずが無い。我が国に紛争の当事国として再び戦火およばないようにするためには、日米で確実に中国を抑止し、中国が武力による台湾統一を企てることをさせないことが必要ではないか、と話を締めくくられた。
多くの出席者から、「ウクライナ侵略の背景や要因についての分析が単純明快で非常に理解しやすい内容だった」「我が国の安全保障に与える影響についてもわかり易く解説いただき大変有意義な講演であった」との意見をいただきました。
神奈川県自衛隊家族会としましては、今後も、時節を捉えたテーマによる講演会を積極的に開催し会員及び一般の聴衆の皆様の防衛意識の高揚に資して行きたいと考えております。
神奈川県自衛隊家族会
事務局長 杉田
テレビを見ているだけでは絶対にわからないことをわかりやすく説明していただけて、とても勉強になりました
現場に立つ人はこのように状況を見ているのかと、新たな視点で考えるきっかけをいただけた
現場に立つ人はやはり危機感がちがう。もっと多くの人に知ってもらいたい内容だと思いました
「ウクライナへの核威嚇に対し、米が動かなかったことが頭にこびりついている」「国を守る、という教育がなされてこなかった」など、現場の方ならではの生の声が聞けて胸熱でした。
自衛隊の主任務が国を守ることだということをあらためて痛感しました。災害派遣ばかりクローズアップされがちですが、国防を担っている現場の隊員たちの声や姿をもっと知ってもらいたいと思いました